鬼平犯科帳名場面や登場人物の紹介

中村吉衛門の鬼平犯科帳は最高傑作である

鬼平と言えば、中村吉衛門の代名詞ともいえる鬼平犯科帳の最高傑作である。
1993年11月の撮影で、製作本数100本を超えた中村吉衛門の鬼平犯科帳。
その全貌を作品データと共に、振り返ってみよう。
すでにDVDとして、市販されており映像を見ながら原作を読み、さらに両方を 見比べて鬼平三昧を味わってみるのも大人の特権だろう。
そんな風に、二重三重に味わえるのが鬼平の世界の豪快さと奥深さではなかろうか。

鬼平犯科帳全作品リスト

浅草・御厩河岸

浅草・御厩河岸(あさくさ・おうまやがし) '89年12月13日

【あらすじ】
飾り職人の松吉は、女房のお梶、父親・卯三郎と3人暮らし。
その実、彼は、火盗改めの密偵でもありました。ある日、大盗・海老坂の与兵衛から、松吉に盗人の仕事の依頼がきます。
密偵でありながらも本格派のお頭・与兵衛の仕事に引きつけられていく松吉。
お梶は、そんな夫の素振りを不審に思いはじめる。

【見どころ】
松吉とお梶のキャラクターが素晴らしい。特にお梶役の浅利香津代は、夫に惚れぬいている。身よりのない女郎上がりの女を好演しています。
惚れているからこそ、松吉のことを火盗改めに訴え出る場面もよい。
また、与兵衛に扮した岩井半四朗も、本格派盗賊らしい風格を見せています。

【ポイント】
原作は、記念すべき"鬼平"第1作。松吉は実は、他のエピソードでも活躍する"豆岩"こと
岩五郎になっています。卯三郎が同居しているという設定はドラマならではのもの。

脚本=安倍徹郎  監督=大洲斉
出演=平蔵、久栄、山田、竹内、山崎、酒井、松吉(本田博太郎)、お梶(浅利香津代)、海老坂の与兵衛(岩井半四朗)、卯三郎(田武謙三)、彦造(石山雄大)
善太(遠山二郎)

山吹屋お勝

山吹屋お勝  '90年1月10日

【あらすじ】
平蔵の従兄で、もう54歳になる三沢仙右衛門が、再婚すると言い出した。
相手は、料理屋の女・お勝。平蔵は、密偵・関宿の利八に、お勝の身辺調査を依頼する。
利八はお勝の正体がかつての盗賊仲間で、自分と深い仲だった、おしのであると知り・・。

【見どころ】
おしのに新たに好き合った男・政がいると知って、二人の幸福にしてやろうとする利八。
昔の女のために、死地へと赴くストイックな男を、森次晃嗣が好演しています。

【ポイント】
原作には、おしのの今の男、政は登場しません。利八とおしのは二人手を取り、姿を消すという結末で、ドラマとは、後味がかなり違っています。
また、原作では、利八のかつてのお頭・夜兎の角右衛門がすでに捕まり、平蔵の密偵になっているという設定になっています。

脚本=野上龍雄  監督=小野田嘉幹
出演=平蔵、久栄、忠吾、小柳、沢田、村松、山田、山崎、竹内、三沢仙右衛門(北村和夫)、お勝(風祭ゆき)、関宿の利八(森次晃嗣)、霧の七郎(管貫太郎)、政(森田順平)、弥吉(岡部征純)、お才(西岡慶子)、夜兎の角右衛門(五味龍太郎)

むかしの男

むかしの男 '89年12月20日

【あらすじ】
平蔵は、盗賊召し捕りに甲州へ。その留守中、久栄に娘時代に関わりのあった近藤唯四朗から呼び出しの手紙が届く。近藤は、今では盗賊の手先。久栄に、盗賊・砂吉を牢から出してくれと頼むつもりが、はねつけられる。
盗賊一味は、久栄の妹みゆきの娘・たえを誘拐。
砂吉との人質交換を言い出します。

【見どころ】
久栄が、平蔵の妻として気丈な振る舞いを見せる作品。
見どころは、唯四朗が捕えられてから。
久栄は平蔵に、唯四朗が自分にとって初めての男だと隠していたが、平蔵はすべて知っていた。その上で、久栄と結婚したという平蔵の言葉に久栄の目が思わずうるむ。

【ポイント】
原作では、誘拐されるのは同心・小野十蔵と関わりがあった女・おふじが生んだ娘・お順。この子は、平蔵夫婦に養女として引き取られています。
また近藤唯四朗は、勘四朗となっています。

脚本=安倍徹郎 監督=小野田嘉幹
出演=平蔵、久栄、辰蔵、酒井、小柳、沢田、山田、竹内、山崎、近藤唯四朗(鹿内孝)、勘造(亀石征一郎)、美雪(小林かおり)、砂吉(きくち英一)、三次(下元年世)、用人・松浦与助(阿木五郎)

女びきお富

女びきお富 '89年12月6日

【あらすじ】
三沢仙右衛門と王子権現へ出た平蔵は、つけボクロの女・お富を見かける。
お富は、今は笠屋・卯吉の女房。だが、その前身は名ウテのスリでした。
かつての仲間・七五三造に「過去を卯吉に知られたくなければ百両用意しろ」と脅された
お富は、つけボクロをして犯行を重ねる。それを平蔵は見逃さなかった。

【見どころ】
お富の回想によって、スリ修業が細かく描かれています。指の使い方、いろいろなスリの手口を見るだけでも面白い。
また、七五三造役の片桐竜次は、ゲストとして鬼平常連の一人でもあります。

【ポイント】
ドラマでは、七五三造はスリ仲間の内でも、若き日のお富にとって唯一の味方でした。
だが、原作にはそういう伏線はありません。また、最後に平蔵がお富の指の筋を切り、
悪さをやめさせるのも、ドラマだけの脚色。

脚本=安藤日出男  監督=高瀬昌弘
出演=平蔵、久栄、忠吾、小柳、沢田、山田、竹内、山崎、彦十、お富(坂口良子)
三沢仙右衛門(北村和夫)、霞の定五郎(陸五郎)、卯吉(中西良太)、岸根の七五三造(片桐竜次)、狐火の虎七(根岸一正)

盗法秘伝

盗法秘伝(とうほうひでん) '89年11月29日

【あらすじ】
平蔵は伯母の法要のため、忠吾を連れて浜松へ赴いた。
その帰り道、単独行動をとった平蔵は、伊砂の善八という独りばたらきの盗人と知り合う。
なんと、善八は、平蔵に惚れ込んで、自分の盗法秘伝の趾継ぎになってくれと頼み込んできたが・・・。

【見どころ】
殺し合いが一切ない、コミカルな作品。善八に扮したフランキー堺と、中村吉衛門との、余裕たっぷりの掛け合いを存分に楽しめます。
番犬に眠り薬入りの握り飯を食わせ、戸を開ける時は音が立たないように水をまくなど、ディテールこまかな盗人の手口も見もの。

【ポイント】
原作では、平蔵が京都へ向かう途中で遭遇した事件。また升屋から盗んだ金は、善八が
全国に持つ7か所の盗人宿の一つに隠すことになっていて、ドラマのようにお守り袋に隠し場所を書いているのではない。

脚本=井手雅人  監督=杉村六郎
出演=平蔵、忠吾、伊砂の善八(フランキー堺)、鬼頭鍳物(津村鷹志)弥吉(吉田
将士)、米倉半四朗(加島潤)、升屋市五郎(田中宏史)、おかね(川村一代)
女郎(大島瑤子)、おもよ(園英子)


泥鰌の和助始末

泥鰌の和助始末(どじょうのわすけしまつ) '8911月1日

【あらすじ】
腕の良い大工・和助が3年ぶりに江戸へやってきます。和助の子・磯太郎は、大工仲間・
孫吉の子として育てられ、今では小津屋の手代となっています。
ところが、磯太郎は、小津屋の旦那に金を使い込んだという濡れ衣を着せられ自殺。
和助は、一度はやめた盗賊へと再び戻り、息子の仇を討つため、小津屋に忍び込む。

【見どころ】
和助は、盗みによってわが子の無念を晴らそうとします。捕縛されると覚悟を決めてから、小津屋の証文書類を破って川へと流してしまう和助。
財津一郎の好演もあって、彼の心の内にある怨みが一気に噴出した、鬼気迫る場面です。

【ポイント】
原作は、この話と「下段の剣」を合わせた内容になっています。そのため、和助は、剣客・松岡重兵衛との絡みが多い。
ドラマでは、磯太郎の育ての親・孫吉と和助との友情がより、クローズアップされています。

脚本=安倍徹郎  監督=高瀬昌弘
出演=平蔵、久栄、酒井、忠吾、村松、竹内、山崎、彦十、伊三次、おまさ、和助(財津一郎)、大工孫吉(小鹿番)、磯太郎(山崎有右)、金谷の久七(高峰圭二)
棟梁喜兵衛(森幹太)

あきれた奴

あきれた奴 '89年10月25日

【あらすじ】
同心・岡村啓次郎は、ある日橋の上から身投げしようとしていた母子を助ける。
女は、岡村が10日前に捕えた盗人・鹿留の又八の女房おたかだった。
又八には、人を殺し、金を独り占めして逃げた相棒がいる。
おたかの話などで、又八の人柄を見込んだ岡村は、又八を逃がす。
事情を察した平蔵は、岡村を牢に入れ様子を見守る。

【見どころ】
岡村と又八の信頼関係、又八とおたかの愛情、そして岡村の行動を信じる平蔵。
それらが、見事に調和した作品。岡村役の中村橋之助が、見かけによらず肝の太い男を好演。

【ポイント】
原作との大きな違いは、これは岡村の話ではなく、同心・小柳安五郎のエピソードであること。原作では、又八はかつての葦火の喜之助一味、又八の知り合いの清五郎は、夜兎の角右衛門一味だった本格派という説明があります。

脚本=保利吉紀  監督=大洲斉
出演=平蔵、久栄、忠吾、沢田、山田、竹内、山崎、三次郎、おまさ、岡村啓次郎(中村橋之助)、おたか(長谷直美)、鹿留の又八(平泉成)、天野甚造(御木本伸介)
八丁山の清五郎(宇田比呂也)、雨畑の紋三郎(三浪郁ニ)

笹やのお熊

笹やのお熊 '89 年10月18日

【あらすじ】
平蔵の若い時からの知り合い、お熊婆さんが、妙な話を持ってくる。
茂平が、今わのきわにお熊を呼び、自分の死んだことを千住にいる畳屋の庄八に知らせ、
58両もの大金を神奈川宿にいる孫に届けてくれと言ったとか。
その大金から、平蔵は茂平を盗賊の引きこみだったと睨んでいます。
庄八はおそらく、一味の者。そうして探索が始まった。

【見どころ】
お熊に扮した北林谷栄(最近亡くなられましたが)は、萬屋錦之介版でも、同じ話でお熊を演じています。そのためか、歳はとってもやたらに威勢のいいこの役を、すっかり自分のものにしています。
彦十との口けんかの場面など、呼吸も合っていて面白いです。

【ポイント】
原作タイトルは「お熊と茂平」。ドラマでは、お熊はこれが初登場ですが、原作では他にも顔を出しています。茂平は、原作では庄八の伯父という役になっています。


脚本=櫻井康裕  監督=吉田啓一郎
出演=平蔵、久栄、佐嶋、酒井、沢田、竹内、山崎、三次郎、彦十、粂八、お熊(北林
谷栄)、荒尾の庄八(早川純一)、庄八の女房(田畑ゆり)、今市の十右衛門(五味龍太郎)、入升屋市五郎(下元年世)

兇剣

兇剣(きょうけん) '89年10月11日

【あらすじ】
平蔵は忠吾を伴い、16年ぶりに京都へ、父の墓参に訪れた。京都西町奉行所与力・浦部彦太郎の薦めで奈良見物に行こうとする直前、平蔵はおよねという娘に会います。
およねが働いていた大阪の出雲屋は、実は大盗・高津の玄丹の盗人宿。
玄丹の悪業を知って逃げてきたおよねも連れ、平蔵は忠吾、彦太郎と奈良へ。
その一行の命を、玄丹に雇われた浪人集団がつけ狙っていました。

【見どころ】
やはりこの回は、浪人たちと平蔵との息づまる死闘が見もの。間一髪で左馬之助に助けられますが、平蔵が追いつめられます。
また彦太郎役の井川比佐志は、実直で利け者の与力がピッタリです。

【ポイント】
冒頭に出てくる虫栗の権十郎一味捕縛の事件は、原作「艶婦の毒」に詳しい。
ドラマでは、玄丹は追い詰められ自決しますが、原作では、牢内で死んでいます。

脚本=中村努  監督=小野田嘉幹
出演=平蔵、久栄、忠吾、佐嶋、浦部彦太郎(井川比佐志)、高津の玄丹(藤岡琢也)
岸井馬左之助(江守徹)、およね(長谷川真弓)、大河内一平(大前均)、白狐の谷松
(松崎真) 猫鳥の伝五郎(粟津)

狐火

狐火(きつねび)  '89年9月27日

【あらすじ】
市ヶ谷の山田屋に賊が入り、17人を惨殺。残された目印の札から、"狐火"一味の仕業とわかります。狐火の2代目・勇五郎とおまさは10年前深い仲でした。
そのためおまさの心は乱れますが、偶然にも勇五郎と再会。
山田屋の一件は、勇五郎の腹違いの弟・文吉がしたことだと知ります。
勇五郎は、自分の手で弟の始末をつけると言い出しますが・・・。

【見どころ】
おまさが、眠っていたかつての恋心を取り戻し、密偵という立場との間で揺れる作品。
平蔵が、先代の狐火の女と深い仲だったことも明かされます。この両者の過去を知りつくしている彦十の気配りが、随所で胸に響く好編です。

【ポイント】
原作では、おまさと勇五郎との男と女の関係が、もっとも明確に描かれています。
最後、おまさは勇五郎と夫婦になり、京都へと旅立ちますが、ドラマではひと月、原作では1年足らずで勇五郎が病死することになっています。

脚本=星川清司  監督=小野田嘉幹
出演=平蔵、久栄、忠吾、三次郎、沢田、山田、竹内、山崎、彦十、おまさ、
狐火勇五郎(速水亮)、瀬戸川の源七(垂水悟郎)、文吉(伊藤高)、お久(池田純子)

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