テレビ時代劇としての鬼平犯科帳
鬼平犯科帳は、池波正太郎による時代小説で、全部で135作、番外編が1作書かれています。テレビドラマとしては、四人の役者によって演じられ、初代から三代目までは東宝が、四代目は松竹が製作しています。
初代鬼平 八代目松本幸四郎
初代鬼平を演じたのは歌舞伎役者の八代目松本幸四郎(後の初代 松本白鸚・まつもとはくおう)で、四代目鬼平を演じた二代目中村吉右衛門の父である。
原作者の池波正太郎は、松本幸四郎をイメージして小説を執筆していたそうで、松本幸四郎はどっしりとした風格がある鬼平を演じ、人気時代劇となったようだ。
私は時代劇専門チャンネルで放送されているので、視聴しているのだが、いつも右目をやや半開きぎみにしていて、また渋めの枯れた感じの声で、煮ても焼いても食えないような、ちょっとふてぶてしい感じの印象をうける。悪人から見たら、さぞ憎らしく見えるだろうという感じがする。
二代目鬼平 丹波哲郎
二代目鬼平を演じたのは丹波哲郎。初代の古狸的な風貌にたいして、二代目鬼平はシャープな面立ちに身長175cmという当時としては高めの身長から、まったく違った鬼平像となったように思う。
丹波哲郎版鬼平犯科帳は1975年放送なので「鬼平犯科帳’75」とよばれる事もあるが、同じく丹波哲郎がボスとして出演していた「Gメン’75」Gメン’75と同じなのが面白い。私はこの当時Gメン’75を毎週楽しみにみていたのだけど、丹波哲郎は現代劇の役者のイメージがあって、どんな鬼平だったのか、機会があったらぜひ見てみたいと思っている。
三代目鬼平 萬屋錦之介
二代目鬼平を演じたのは錦ちゃんこと萬屋錦之介。前名は中村錦之介で、歌舞伎から映画に転向して時代劇スターになった。映画だけでも145本も出演しているし、多くのテレビドラマにも出演していて、私も子連れ狼なんか何度見てもあきません。
萬屋錦之介は身長162cmと、丹波哲郎と比べて小柄だが、すっとした立ち姿は大きく感じる。また、立っていても座っていても姿勢が美しくて、ピシっとしたその佇まいはいつもほれぼれしながら見ています。
そしてあの、キッとした目つき。自分が悪党だったら、あの目で睨みつけられたら動けなくなりそうです。
私は錦之介の殺陣も大好きなのですが、特に好きなのが刀を鞘に納めるところ。鬼平犯科帳ではあまり写らないのですが、子連れ狼ではよく映ってました。
錦之介は91年のテレビドラマで、雲霧仁左衛門も演じている。しかも、こちらも池波正太郎の原作をドラマ化したもので、長谷川平蔵は火付盗賊改方の長官だが、雲霧仁左衛門はその真逆になる盗賊というのが面白い。
四代目鬼平 二代目中村吉右衛門
四代目鬼平を演じたのは、二代目中村吉右衛門。歌舞伎役者で、重要無形文化財保持者(人間国宝)。です。
先にも書きましたが、初代鬼平を演じた八代目松本幸四郎の次男で、親子で鬼平を演じたことになります。中村吉右衛門は、初代鬼平の第2シリーズでは、長谷川平蔵の息子・辰蔵を演じていて、劇中でも親子なのが面白いです。
その辰蔵役では、ひょろっと長身で、剣術はたいしたことがなく、女好きな、ちょっと駄目な息子を演じていたのだが、鬼平では渋い声のダンディなイメージで鬼平を好演している。こんな見比べも楽しいので、機会があったら旧作も見て欲しい。